継続は力なり

たまに、思い出したかのようにチェロを弾くときがあります。普段から弾いているわけではないので、正直自慢出来るような腕でもないのですが少しでも忘れないように、その音を、その感覚を。

「今後、何があっても楽器を押入にしまい込むようなことだけはするな。」
「『楽器を弾いています』と『楽器を弾いていました』には深い隔絶があるんだ。」

私が教えを請うた先生が常々言っていた言葉です。この言葉は至言だと思うが故に、今でも近所迷惑な音を出しているのだと思います。

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今日、水墨画をやっている方のお宅へお邪魔しました。今度ある展覧会に出す、ということで白梅を描いた立派な作品が額装されていました。

その作品を眺めながら二人でお茶を飲んでいると、そのお茶に酔ったのか若い頃の話をし始めました。曰く、ある先生の直弟子として30人はいたのだけれど、今もやっているのは片手ほどしかいない、と。やめていった人の中には自分よりもずっと上手い人達がいたのに、勿体ない話だと。


『継続は力なり』という言葉があります。「続けていればいずれ少しずつでも上手くなっていく」という意味合いだと思われますが、実は「続けるということが出来るのは才能である」ということなのではないか、と思っています。


続けていくとどうしても壁にぶつかることになります。技術的なこと、或いは生活的なことかも知れません。それを乗り越えられるかどうか……その鍵はなんでしょうね、と問うと

「利口じゃ駄目なんだよ。つい損得を考えちゃってやめてしまう。」
「私みたいに馬鹿なくらいが丁度いいのさ。」

とのお答え。これもまた至言かな。