L997は買いか?

 EIZO FlexScan L997が届いて一週間が経ちました。さほど触れてはいませんが一通りの設定なども行った上で私見を述べさせていただきます。
 一応比較基準は20万前後の価格帯までで。

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 以前ファーストインプレッションでも書きましたが結局のところ前モデルであるL985EXを上手にコストダウンした機種、です。
 元々L985EXSharpLL-T2020、そして三菱のRDT211Hが『御三家』を形成していたのですが、裏を返せば一長一短があって微妙に決定打に欠けたのも事実です。

 さて、そんな中後継機として出たL997ですが、実際に使ってみると確かに素晴らしい正確さです。出荷時の設定でもかなりのものですが、きちんと設定を詰めれば数値と見た目が綺麗に一致する様は精神的にとても安心出来ます。

 ただし『正確』ではありますがそれだけです。なんというか……色気にとことん乏しいです。この辺は所謂『モニタ』としての性格付けもあるのでしょうけれどね。若干レガート気味ながらも素晴らしい滑らかさのLL-T2020、ハッとする鮮やかさのRDT211Hに較べるととことん地味です。またパネル自体の設計の古さもあって、ほんの僅かながらドットの粒を感じます。流石にDell UltraSharp 2001FP HASの様にはっきり目立つものではありませんが。

 オーディオなどの世界もですがこの手の『モニタ』は所有欲を満たすものではありません。徹頭徹尾『道具』です。勿論プロが仕事で使うだけでしたらこれほど頼もしい『道具』はありませんが、基本的には物足りない……或いは手に余るディスプレイだと思います。正直な話、現在では特にその辺の仕事をしているわけではない一喫茶店主としては他の選択肢もあったかなぁ、と思うところはあります(^-^;

 実際EIZOさんのショールームでも『売り』はActiveRotation II(ハードウェアピボット)でした。が、この手のピボット機能の有効性はかなり限られますし、ハードウェア制御とは言っても結局マシン側にユーティリティソフトを入れる必要があることを考えると中々微妙だと思われます。ActiveShot(二画面表示)は便利なのですが、外装がL985EXのままのため専用ボタンなどの追加が無く、ちょっと表示させたい、ちょっと消したい、という細かい使い勝手で劣ります。

 もちろんEIZOの5年保証や、代替機貸与などのサポートを考えればそれでも選ぶ理由付けとして十分といえるのですが、それなら20インチのL887の方がコスト的にも、またパネル的にも有力な選択肢になるのではないかな?と思います。確かに斜めから見た場合の色変位はありますが、普段から斜めに見る人はいないでしょうし(^-^;上記機能に加えてDual DVIに意義を感じないのであれば、5万円の価格差は大きいと思います。

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 と、まるで「買うな!」といわんばかりの感想ですが、正直自分で判断出来ない人は買わない方が良いと思います。普通の使い方であれば2001FPでも十分でしょうし、それ以上を求めても他に選択肢は数多あります。15万前後でもEIZOブランドに拘るなら先述の通りL887がありますし、綺麗さを求めるならiiyama ProLite H540Sがあります。


 ここまで読んで

「いや、道具として必要なだけだから」

と言える人だけが買うべき、ある種の通好みな『モニタ』……それがL997でしょうね。